「神の冬 花の春」第三章の2

  • 2014.11.30 Sunday
  • 22:34
 図書館から校庭へ出ると、グランドを走っている人影が目に入った。
 バックネットのあたりで立ち止まり、何か叫んでいる。
 それが更紗だと分かったので、季里は本をショルダーバッグに入れて、近づいていった。
 更紗は、また走りだす。
 後を追って、季里はたずねた。
「何をしているの?」
「練習よ」
 足を止めずに、更紗は答えた。
「演劇部の?」
 部活なら、他の選手もいるはずだが……。
「ううん。私個人の練習。私、強くなるの」
「どうして走るの?」
「腹筋を鍛えるためよ。走って、発声練習して、それを繰り返すの」
 更紗のスニーカーが、薄い雪をざくざく踏んで行く。すでに何周かしたのだろう、雪の上には足跡が幾重にも刻まれていた。
「じゃあ、舞台に出るの?」
「そうよ。主役なの。あたしひとりの舞台」
「ひとり芝居っていうこと?」
「そうかもね」
 更紗は笑って、
「すごくいい気分よ、季里。私ね、神さまだったの。今日、思いだしたの」
「神さま?」
「うん。この冬は、あたしのためのものなの。見ててごらん、もうすぐいつもとちがう冬がくるから」
 更紗は楽しそうだった。
 ついて走って、季里は息を切らせた。
「そんなに速く走らないで。私、もう走れない」
「弱い子ね、季里は。でも、あなたは弱い子だから、助けてあげる。あなただけは、生かしておいてあげるからね」
 季里には、更紗の言っていることの意味が分からなかった。何を言っているんだろう。
 けれどもどこかしら、不吉なものがあった。
 走り疲れて、季里は立ち止まり、空を見上げた。
 むらになった灰色の低い雲が覆う空から、雪のかけらが一つ二つ、ひらひらと下りて来る。
 冷たい空気に白い息を吐きながら、更紗はグランドを回り続け、また止まっては、大きな声をあげていた。
「ア、エ、イ、ウ、エ、オ、ア、オ!」
「カ、ケ、キ、ク、ケ、コ、カ、コ!」
 声は鋭い響きとなって、空気に突き刺さっていた。
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季里メモ:ここから先、私がどう行動するかは、まだ、決まっていません。
 すこし、間が空くかもしれませんが、しばらくお待ちください。
 
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